“攻殻機動隊”の光学迷彩を現実に ─ 東京大学発ベンチャーEVISION、ゴーグル不要没入型ディスプレイで3度目の資金調達へ

XR技術

SWAN LAKE〜starring KizunaAI キービジュアル
SWAN LAKE〜starring KizunaAI(2025年12月26日より全国ロードショー) 出典: PR Times

SFの世界を現実化する東大発スタートアップ

2025年12月20日14時、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」にて、注目のスタートアップが3度目の資金調達を開始する。その名は株式会社EVISION──東京大学発のベンチャー企業だ。

EVISIONが開発するのは、ゴーグル不要で空間に立体映像を投影する「イマーシブディスプレイ」。VRやARといえばヘッドマウントディスプレイ(HMD)が必須というのがこれまでの常識だったが、EVISIONはその前提を覆す技術を実用化している。

さらに注目すべきは、同社の技術基盤が日本を代表するSF作品『攻殻機動隊』に登場する「光学迷彩」を現実化した研究から生まれていること。東京大学の稲見昌彦教授が開発し、2003年に米TIME誌「Coolest Inventions of the Year」に選出されたその技術が、今まさに商業化フェーズに入っている。


経営陣と東京大学との産学連携

EVISIONを率いるのは、映画監督の奥秀太郎氏。演劇・映像の世界で培った演出力と、最先端技術を融合させるビジョンを持つ人物だ。

そして同社の技術的支柱となるのが、取締役を務める稲見昌彦教授。東京大学先端科学技術研究センターの教授であり、「人間拡張工学」「自在化技術」という研究分野を切り拓いてきた世界的権威だ。

稲見教授の実績は華々しい。

  • 2003年: 光学迷彩技術で米TIME誌「Coolest Inventions of the Year」選出
  • 文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞
  • JST ERATO稲見自在化身体プロジェクト研究総括

EVISIONは、東京大学先端科学技術研究センター内に開発・実装拠点を設置。さらに慶應義塾大学、宇都宮大学、フランス国立研究所(CNRS)など国内外の先端研究機関との共同研究を展開し、産学連携のモデルケースとなっている。

前期の売上高は約2.3億円と当初の事業計画を上回り、2025年5月にはIPO(新規株式公開)に向けたショートレビューを完了。2028年のIPOを目標に、急成長を続けている。


コア技術を徹底解説

EVISIONの競争力の源泉は、独自の光学技術群にある。それぞれを詳しく見ていこう。

イマーシブディスプレイ ─ ゴーグルなしで没入体験

イマーシブフィルム映画祭
イマーシブフィルムと先端科学技術の映画祭 出典: PR Times

EVISIONの主力製品「イマーシブディスプレイ」は、古典的な映像手法「ペッパーズゴースト」を現代技術で発展させたものだ。

ペッパーズゴーストとは、19世紀から劇場やアトラクションで使われてきた技術で、部分的に反射するガラスを使って幻想的な映像を実像と重ね合わせる手法。EVISIONはこれを、半透明鏡再帰性反射材パネルを組み合わせることで大幅に進化させた。

反射させた光を一点に集める光学設計により、何もない空間に映像を浮かび上がらせることが可能。従来のスクリーン映像とは異なり、強い立体感と臨場感を持つ映像体験を実現している。

2025年7月より本格販売を開始し、これまでに約110台が販売された。国際展示会や博覧会、ミュージカル、バレエなどの舞台演出で採用が進んでいる。

光学迷彩技術 ─ 攻殻機動隊を現実に

光学迷彩技術
光学迷彩技術のイメージ 出典: PR Times

『攻殻機動隊』ファンなら誰もが憧れる「光学迷彩」。作中では、特殊素材のスーツを着ることで周囲の風景に溶け込み、姿を消すことができる。

稲見教授が開発した光学迷彩技術は、まさにこのSF設定を現実化したもの。対象物の後ろの景色をリアルタイムで撮影し、再帰性反射材を用いた前面に投影することで、人や物を透き通って見えるようにできる。

EVISIONは、この光学迷彩技術に関する特許を全面的に譲り受け、商業利用のライセンスを保有している。

空中結像技術(AIRR)と GHOSTGRAM

さらにEVISIONは、煙霧などの媒体を必要とせずに空間に映像を表示する「空中結像技術」も展開中だ。東京大学・宇都宮大学との連携で開発が進められており、新たな特許出願も準備している。

これらの技術を総合した特殊映像システムは、稲見教授により「GHOSTGRAM」と命名された。GHOSTGRAMは、

  • INNOVATIVE TECHNOLOGIES 2020 受賞
  • 羽倉賞ノミネート賞 受賞

という2冠を達成し、技術的な革新性が高く評価されている。


代表作品と実績

EVISIONの技術は、すでに多くの実績を積み上げている。

VR能 攻殻機動隊 ─ 伝統×テクノロジーの衝撃

VR能 攻殻機動隊
VR能 攻殻機動隊 出典: PR Times

EVISIONの代表作といえるのが、2020年に初演された「VR能 攻殻機動隊」だ。

日本が世界に誇る伝統芸能「能」と、最先端のVR技術を融合させたこの作品は、画期的な演出で大きな反響を呼んだ。最大の特徴は、VRゴーグルを一切使用せずに、舞台上に仮想現実空間を再現したこと。

観客は肉眼で、能舞台上に現実と仮想が混在する不思議な空間を体験できる。原作に登場する光学迷彩による「出現・消失・分裂」といったSF的現象が、現実の舞台上で可視化されるのだ。

その衝撃は大きく、国内外で十数回の再演を重ね、累計4万人以上を動員。ベネチア公演を皮切りにワールドツアーも実施され、日本のテクノロジー×伝統文化の融合として国際的な評価を得ている。

SWAN LAKE〜starring KizunaAI ─ VTuberがバレエで映画館へ

EVISIONの最新プロジェクトが、伝説のバーチャルYouTuber「キズナアイ」が主演する没入型バレエ映画『SWAN LAKE〜starring KizunaAI』だ。

3年間の活動休止を経て2025年2月に復活したキズナアイが、チャイコフスキーの名作「白鳥の湖」をバーチャル空間で演じる。EVISIONが演出・制作を手がけ、カンヌ国際映画祭にも出展された話題作だ。

2025年12月26日より、新宿ピカデリーをはじめ全国の映画館でロードショーが決定している。

さらに注目すべきは、マルチフォーマット展開の計画だ。

  • 映画館版: 通常の映画鑑賞スタイル
  • 特別劇場版: 空中結像技術やハプティクスデバイスを活用
  • VR版: Apple Vision Pro、Meta Quest対応
  • AR版: 各種ARグラス対応

同一コンテンツを、視聴環境に合わせて最適化された複数フォーマットで提供する──これはまさに「イマーシブコンテンツ」の理想形であり、EVISIONの技術力とビジネスモデルを示す象徴的なプロジェクトといえる。


資金調達と成長戦略

EVISIONは、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を活用した資金調達で急成長を遂げてきた。

これまでの調達実績

1回目(2024年11月)
– 目標額500万円に対し、5,490万円を調達
– 投資家数: 245人
– 目標の約11倍という驚異的な支持

2回目
– 調達額: 4,500万円
– わずか2時間24分で上限応募額に到達
– 100名以上のキャンセル待ちが発生

計約1億円の調達を成功させ、その資金が事業成長を加速。前期売上高2.3億円という好業績につながった。

3回目募集の詳細(2025年12月20日14時〜)

項目 内容
募集開始 2025年12月20日 14:00
目標募集額 504万円
上限募集額 4,995万円
募集形式 普通株式型
エンジェル税制 優遇措置B対応
株主優待 関連作品のペアチケット

調達資金は主に研究開発費コンテンツ制作費に充当される予定。過去2回の実績から、今回も早期に上限到達する可能性が高いと見られている。


XR業界における意義と展望

EVISIONの取り組みは、XR業界全体にとっても大きな意義を持つ。

ゴーグルレスXRの可能性

現在のVR/AR市場は、Meta Quest、Apple Vision Proなどのヘッドマウントディスプレイが主流だ。しかしHMDには課題もある。

  • 装着感の問題: 長時間使用すると疲労が蓄積
  • VR酔い: 一定割合のユーザーが体調不良を経験
  • 孤立感: 装着者と周囲が断絶される
  • 価格障壁: 高性能機は高額

EVISIONのイマーシブディスプレイは、これらの課題を根本から解消する。ゴーグルなしで複数人が同時に没入体験を共有でき、商業施設や劇場といった公共空間での展開に最適だ。

応用分野の拡大

EVISIONは、エンターテインメント領域にとどまらず、教育・医療分野への応用展開も視野に入れている。

手術シミュレーション、遠隔教育、職業訓練など、「見て学ぶ」ことが重要な領域でイマーシブディスプレイは大きな可能性を持つ。

また、川崎重工から譲受した特許を基に、宇宙用フライトシミュレーターの開発も計画中。宇宙産業という成長市場への参入も見据えている。

大阪・関西万博2025への出展

2025年に開催される大阪・関西万博では、日本館ヘルスケアエリアへの出展が予定されている。世界中から来場者が集まるこのイベントで、EVISIONの技術が披露されることは、国際的な認知度向上とビジネス機会の拡大につながるだろう。


まとめ ─ SFを現実にする挑戦

株式会社EVISIONは、東京大学の最先端研究を商業化するスタートアップとして、着実に成長を続けている。

光学迷彩という『攻殻機動隊』のSF設定を現実化した技術を起点に、ゴーグル不要の「イマーシブディスプレイ」を開発・販売。VR能 攻殻機動隊で累計4万人を動員し、キズナアイ主演のSWAN LAKEはカンヌ国際映画祭を経て全国ロードショーへ──その実績は、単なる研究開発企業ではなく、エンターテインメント×テクノロジーの領域で存在感を示すプレイヤーであることを証明している。

2028年のIPOを見据え、12月20日より3回目の株式投資型クラウドファンディングがスタートする。過去2回は即日完売の人気銘柄だっただけに、投資を検討している方は募集開始時刻に注目しておくことをおすすめする。

「攻殻機動隊」の光学迷彩を現実にした技術者集団が描く未来──それは、VRゴーグルに依存しない、より自然で開かれた没入体験の世界だ。


クラウドファンディング情報
募集開始: 2025年12月20日(土)14:00
プラットフォーム: FUNDINNO(ファンディーノ)
募集ページ: https://fundinno.com/
公式サイト: https://evision.co.jp/

関連作品情報
SWAN LAKE〜starring KizunaAI: 2025年12月26日より全国ロードショー
公式サイト: https://kizunaballet.com/


画像出典
すべての画像は株式会社EVISION発表のプレスリリース素材を使用。
出典: PR Times – 株式会社EVISION

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